耳の鼓膜をどついたれ~
ヒプノシスマイク2019年4月ぶりの新アルバム『CROSS A LINE』です。
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発売10日くらい前から、各ディビジョンの新曲が毎日1曲ずつYouTubeにて公開されました。そもそもYouTubeプレミア公開のカウントダウンの音楽がむちゃくちゃ好きなのでそれだけでテンション上がりまくり。
さらにファンクラブではドラマパートが毎日お披露目されました。しかも今回は18人がシャッフルされるとなったからもう大変。組み合わせにドキドキ、内容にハラハラと充実したヒプマイライフを送ったのであった。個人的にはシャッフル、いつかやるだろうしやってほしいなぁと思っていたのでニッコニコでした。
これは2022年のヒプマイカレンダーなんだけど、今年はこういう風に自分で組み合わせが作れるやつだったんですよ。これが出た時点で今年はシャッフルやるんだろうなぁと思っていた。
というわけでCROSS A LINEの感想です
CROSS A LINE
実はアルバム『CROSS A LINE』というのはヒプマイの屋台骨インビジブルマナー様々の全員用の新曲『CROSS A LINE』と同じタイトルであるわけです。しかしながら新曲CROSS A LINEについては話の流れの都合で最後に感想を書こうと思います。とばします。
IKEBUKURO WEST BLOCK PARTY
なんとヒプマイファミリー(?)DJ U-ICHIさんの作編曲。DJ U-ICHIさんは2ndバトルの6ディビジョンミックスメドレー曲を手がけているんですが、これがもうエモと甘と辛の塩梅が完全にヒプマイを理解している人の作品だったのでこれはすごい人だと思っていたら、この新曲もやっぱりすごかった。試聴の時点でもいい曲だったけどフルで聞いたら最高に盛り上がるし気持ちいい!
Go Go Go Go My Way
Step Step Step Step by Step
の中毒性よ。
略すとIWBPとなり、神曲IWGPの大向こうを張る大胆なネーミングなんだけど全く名前負けしてない素敵な楽曲でした。私はこっちの方が好き。
Scarface
ヨコハマの新曲はScarface。アル・パチーノ主演の同名の映画があるそうだけど観ていないので何ともいえない。言葉としては「傷のある顔」という意味で、その名の通りこの楽曲は
流れる血は水に流されない
だとか
痣だけのこる
だとか
心の痣が消えていく
といった傷を連想するリリックが多い。
ヨコハマ、虫を食べてギャーみたいなおもしろディビジョンでもあるんだけどその一方で、おそらく暴力を受けて育った左馬刻、両親を一度に事故で失った銃兎、軍隊で生死を生業にしていた理鶯と、暴力と死の匂いのするメンバーの集まりでもある。この曲はそういう傷だらけなMTCをすくい上げたとことんビターな楽曲となっていて、そういうのもアリだなぁヨコハマだよなぁとうなってしまった。
また、理鶯が
というCROSS A LINEを連想させるようなリリックを使っているのを聞いて、いま一番ヒプノシスマイクという物語(CROSS A LINE編か?)とのシンクロ率が高いのは理鶯なのかな…となんとなく思った
とりま Get on the floor
フリングポッセの新曲はなんと弥之助さんが登板。PCCSやStellaなど、ヒプ男ヒプ女がバッタバッタと五体投地しながら倒れていく名曲を生み出してしまうでらすげぇお方です。
今回の曲もかわいい!
そうそう、シブヤ優勝記念CDで夢野幻太郎がこの世のものとは思えないカエルの真似をしながら言ってたゲロゲーロゲが曲中の
Get on get on Get (on the floor)
で使用されていてにやりとしする。
そして私がいちばんいいなぁと思ったのが、この濃ゆい仲良し曲を歌い終わった最後の最後で飴村乱数が
なんてね
といったこと!!!
乱数ってわりとこういう茶化し癖というか、場の平行感覚を保ってしまう癖みたいなのがあると思ってて、ヒプマイGODの乱数パートでもうざいやらクソやらさんざん悪態ついた後に
なんちゃって冗談! 騙された? フザケ過ぎだよねホントもう…
って自分でツッコミを入れているのでもうそういう性格なんだと思うんだけど、今回も最後に冷静になってしまっているのを見て最高だな飴村乱数うおおおおと興奮した。やはり弥之助さんはキャラ解釈が強い。
シンクロ・シティ
同じ連想をした方がいると思うんだけど、入間銃兎と毒島メイソン理鶯の楽曲『Private Time』のシンジュク版のような雰囲気の曲。今回Private Timeもアルバムに収録されたので聞き比べると面白いかも。
この曲を聞いているとくるりの『春風』をおもいだす。『春風』を聞いてるとはっぴいえんどの『風をあつめて』をおもいだす。だけど『風をあつめてを聞いても『シンクロ・シティ』はおもいださないので音楽というのはふしぎである。
全体的にaiで踏んでいるんだけど、神宮寺寂雷のaiの発音の美しく豊かでセクシーなこと!至福でした。
縁-ENISHI-
耳の鼓膜をどついたれ~
どついたれ~
どついたれ~
今回耳に残る度ナンバーワンリリックかもしれない縁。耳の鼓膜というなんかムズムズする表現が優勝です。仕事中隙あらば鼻歌で歌ってしまう恐ろしい曲。
白膠木簓の内省的なリリックや躑躅森盧笙の長いパートも見せ場だけど(盧笙ラップ上手くなったなぁ…)、天谷奴零が中心になっているのは間違いない。
Let me hear the voice sing again
(もう一度歌声を聴かせて)
と言っているので、原初のヒプノシスマイクの開発自体が妻の声を取り戻す目的から始まったのかもしれない…などと読みたくなる。一ヶ所だけ引っかかったのは
そこに理屈や理論は
という食い気味のリリックで、天谷奴零ってものすごく賢い人のわりに絶対そういう部分を見せない人だと思っていたからこの知的っぽいリリックはちょっとドキドキした。今回のドラマパートでも「俺はただの酒好きのおいちゃんさぁ」って言ってたし。
どちらかというと、DRB+の天谷奴零初登場時のリリック
本邦初公開
やHoodstar+で見せた
肝っ玉が冷やっこい
といったとぼけた雰囲気の、人を食った引き算のリリックを聴きたい天谷奴零…心臓に悪いので…
ところでunity(団結)はレゲエに宿る大切なメッセージらしい。だけど白膠木簓も天谷奴零も
地球の住民それぞれのUnity
という概念、頭では理解していても心の底ではあまり信じることが出来てなさそうなところがいい。一方盧笙は団結とか結束なんかの持つ力や可能性をわりかし真剣に信じてそうでいい
でらすげぇ宴
この曲は同じくナゴヤのR.I.Pとそっくりだと思っていたらなんと作曲の方が同じでびっくり。作詞作曲を同じ方がされていて、歌詞がとても素敵でした。
要は好きにやっちゃって
明日は明日でどうにかなんだろう
般若波羅蜜多なんちゃってな
とかのゆるい感じいいよね。
天国獄さんの
みてろ大人の無礼講
や
金ならあるぞ
という大人げないリリックが最高に好きすぎる。全体的にけだるく投げやりな雰囲気でこの曲がナゴヤ曲で1番好きかも
ドラマパートMixed Up感想
前提として、テレビの企画(Abemaか?)のために18人をくじ引きでシャッフルし前日から密着するというストーリーとなっている。
・山田一郎と躑躅森盧笙と四十物十四がたこ焼き屋を開く。盧笙作の黒いたこ焼きを十四がブラックマターオクトパスインフェルノと名付ける。久しぶりにたこ焼きを焼くなんて腕が鳴るなぁとやる気の盧笙に「躑躅森さんはタコを切って下さい」といきなり地味な作業をふった一郎に大笑いしてしまった。
・独歩がオヤジ狩りにあい財布をとられる。碧棺左馬刻と観音坂独歩と天谷奴零がそれを追跡する。財布をとられたり取引先でビンタされたり無限残業したり3500万落としたりとにかくかわいそうな目にあいやすい観音坂独歩はたぶんヒプ界のちいかわ。
・飴村乱数と毒島メイソン理鶯と伊弉冉一二三はフリーマーケットに出店。乱数デザインのシグニチャー柄のスリーピースを着たひふみと、ピンク色の迷彩服を着た理鶯はぜひ見てみたい
・神宮寺寂雷、山田三郎、天国獄という高学歴チームが誕生してしまった。親睦を深めようとおかしとゲームを持ってきた三郎が子どもらしくてものすごくかわいい。中学時代の思い出として天国獄の奇術王ヘヴンのエピソードが語られてしまい、獄の恥ずかしい過去は天国ムーンだけではなかったことがわかる。全天国獄ファン必聴のエピソード。
・人気コーナー「商店街のヌルサラ」はまだ続いていた…白膠木簓と山田二郎と夢野幻太郎が黒門市場でコロッケパンを食べる。最後にはみんな行きたいところに行くのでバラバラになってしまうという自由さ。
・波羅夷空却が入間銃兎と有栖川帝統にラーメンをおごる話。ルナティックナイトメアラーメンのために空却のラーメンは酸っぱく、銃兎のラーメンは辛く、帝統のラーメンは甘かった。メシで遊ぶなという帝統のまっとうな指摘に心が洗われる。同じラーメンを食べた天国獄は泡を吹いて気絶し、十四は三日三晩泣いてたという話がかわいそかわいすぎてたまらん。
・盧笙の芸人時代は「水があれば十分」だった楽屋だが、今回の企画の楽屋には弁当が数種類ありお菓子もあることに驚いていた。盧笙、若手芸人から教師になったと思ったらまたヒプノシスマイクという芸能の世界に引っ張り出されて大変だなぁ。なにげに生き様の高低差がいちばんあるキャラクターなんじゃなかろうか
・理鶯はピンク色の迷彩服だけではなく、その後かわいくスタイリングされたらしく、最終的にどんな格好で戦っていたのかとても気になる。
・山田三郎、天国獄に向かい「お前みたいなめんどくさいおっさんには敬意を払えない」と、これまでヒプマイ界で禁句とされていた使用禁止ワードを言ってしまう。いらだった獄がいつもの“俺には我慢ならんもんが二つある”をやりだすと、「そういうところがめんどくさい」と完封。私が天国獄だったら泣いていただろう。三郎は天国獄の呼び方も最終的に「天国獄」から「弁護士」になり、もはや職業名になってしまっていたのが大変面白く、この三郎と獄のやりとりだけでアルバム代6380円分の爆笑を受け取った気分。
…と、さっとした感想だけどとても面白いドラマでした。今回のシャッフルチームで楽曲とか出ないかな聞いてみたいな。
というわけで最後に感想、インビジブルマナーさんの新曲
CROSS A LINE
言いたいことはいろいろあって、
急な夕立
珈琲サイフォン
横目にいつものコーラを注文
時間潰し ジャケ買いの本
という一郎のリリックは文学的な雰囲気がするけどたぶん読んでいるのはラノベなんだろうとか、
平行世界生き延びたイカロス
と歌う十四くんは生き延びた天国天であり、十四が生きていることはそれだけで天国獄の存在証明になっているんだなぁとか、
山田三郎の
兄達は選ばないペスカトーレ
別な方へ
という寂しいようなたくましいようなリリックに目頭が熱くなるとか、
あとはもうこれ、観音坂独歩の
お天道さんの下で食べる弁当
途中で買ったコンビニのおでんと
ちょい贅沢が越すラインは
思ってるほどには怖くないんだ
これ。これがつまり今回『CROSS A LINE』の集約のようなリリックで、普段の視点を転換しラインを越すのは怖くないというテーマをこんなにわかりやすく平易な言葉で描くのはほんとうにすごい。
CROSS A LINE、つまり
「通れない…」
場所は
「Skyline!」
というわけで、壊せない壁は飛行して行けばいいじゃんという曲なんですよ、たぶん。
視点の3D化というべきか、歩いて無理なら空飛んじゃえということです。一休さんのとんちみたいだ。
だからMVのモチーフは飛行機だし、
「飛行経路のシグナル了解、越えてけ境界、Pride」
という風に空をフライトする18人の描写で終わるんだろう、と個人的に解釈している。
ところで新曲『CROSS A LINE』では
マイクを通せないいまだ不完全な理想
って歌ってるし、ドラマでは「ヒプノシスマイクを使わないフリースタイルバトルをやってみたい」って言ってるし、新アルバムには“マイクを使わない”というテーマがあるようにも思える。ヒプノシスマイクの脱ヒプノシスマイク化というか。
最終的には、自分の声というのはヒプノシスのないただのマイクで伝えなければいけないんだ…という物語になるのだろうか。だとしたらヒプノシスマイク、少しほろ苦い成長物語である。