今回は前回の記事の続きです
なので先にこちらの記事をお読みください↓
おれがあいつであいつがおれで 夢野幻太郎考察 - pyonkospicaの日記
フリングポッセの夢野幻太郎は別人で、「本物の夢野幻太郎」のふりをしてるんではないかという説なんですが、幻太郎の言動を振りかえりつつ、さらに話を進めてみましょう。
幻太郎の歌詞
まず歌詞を見直します。
演じきる背徳的態度
性悪でnoirなジキルとハイド
(Hoodstar)
いきなり「演じきる」って言っちゃってるよ・・・
「背徳的態度」「性悪」「ノワール」「ハイド」を演じてるってことは、夢野の本質は「ジキル」であり善良な人物ってことかな
明治大正昭和平成令和
厭世的時代考証
真似し青年
真似・・・
物狂で不器用な文豪のイメージ
「イメージ」があるということは「実物」は違うってことか・・・
意味深なフレーズがけっこう出てきました。
「演じきる」「真似」「イメージ」・・・
どうも幻太郎の内面と現実が乖離しているような歌詞が散見されます。
彼の格言である
「人生は願望だ、意味じゃない」もそうなんですが、幻太郎はリアルより夢や幻の方を向いて生きている人物みたい。
Stella
Stellaは幻太郎の作った物語という設定があるので劇中劇といえどもヒントが隠されている可能性は高いはず。
たとえば「Stella」の「右側が水晶、左側が砂の星」は、「真実」と「嘘」の隠喩かと考えてましたが、「本物の幻太郎」「偽物の幻太郎」の隠喩も兼ねてるのかもしれません。
さらに、Stellaでは不思議なことに、幻太郎が演じる登場人物が最初は「山賊」なのに途中でいきなり「盗賊」になるんですよ。
右側が水晶 左側が砂の星で山賊が
山賊って言ってたのに
盗賊には盗賊の流儀があると知れ
盗賊になってる。
この表記のブレは初めて歌詞カードを見たときから疑問に思っていた点なんですが、これは「普通の少年」がいつの間にか「夢野幻太郎」に変身し、こっそり成りかわったことを表現しているとしたら納得。
つまり途中で実は彼の属性が変わっているということを、Stellaの中で山賊が盗賊になることでほのめかしているんです。
で、なぜ幻太郎は自分を盗賊に設定したのかというと、他人のもの(寝たきりの青年の名前と生き様)を自分のものにしてしまったから、じゃないかな
「自分は夢野幻太郎の名前とキャラクターをぬすんだ」と幻太郎本人は思っているのです。
そういう後ろめたさもあって幻太郎の役は盗賊になったんじゃないでしょうか。
幻太郎の一人称
幻太郎の一人称ってやたらと多いですね。
「小生」「わらわ」「それがし」「俺」「私」「余」「わっち」などなど・・・
たぶん真実を語る用の一人称があるんですよ。『幻太郎を演じてる人』用の、本物の一人称が。
木を隠すなら森のなか、
真実を隠すなら嘘のなか。
たくさんの一人称のなかにひとつだけ、彼のほんとの主語が隠れてるとしたら・・・
全セリフを調べてみたら何かわかるかもしれない。
夢野幻太郎のヒプノシスマイク
幻太郎のマイクは昔の電話なのですが、立ち絵では左耳で何かを聴いています。
あの電話、どこにつながってるんでしょう?
寝たきりの青年(本物の夢野幻太郎氏)に繋がっていて、彼の声を物理的・精神的に聴いているとしたらいいな。
幻太郎は青年の声なき声をくみとり、変換、増幅させる装置としての役割(まさに電話のようです)をしてるようにも見えます。
『夢野幻太郎』の真実
ところで以前のフリングポッセの公式紹介文って
天然ジゴロ・ペテン師・ギャンブラーからなる奇人変人のネクストジェネレーション!!
だったんです。今もそうなのかな?
「天然ジゴロ」は乱数
「ギャンブラー」は帝統です。
実は幻太郎のキーワードは「作家」ではなく
「ペテン師」だったんですよ。
まさかの詐欺師・天谷奴と同業です。
幻太郎はそもそものキャラクター設定から、嘘をつく人として紹介されてるんだね。
そういえばコミカライズにて、山田三郎が大金を支払い夢野幻太郎についての情報をプランドラーで買う場面があります。
三郎が集めたのは
『夢野幻太郎の生い立ちから現在までの情報』
そして手に入れた情報は
『夢野幻太郎 作家
難病を患ってる友人のために作り話をしたのが小説を書くきっかけ』
(たぶん三郎が手に入れたのは『シナリオライアー』で明かされている情報だったのではないでしょうか。あれが夢野幻太郎の『秘密扱いの』公式設定なんだと思う)
三郎と『夢野幻太郎』についての会話をした天谷奴はその後「夢野幻太郎の真実は隠し通したからいいじゃないか」みたいなことを乙統女に言います。
どうやら三郎の情報だけではまだ夢野幻太郎の真実には到達できていないらしい。
では中王区が隠さないといけない「『夢野幻太郎』の真実」って何だろう?
と考えた際、
物語的にインパクトがありスムーズな解は、
「夢野幻太郎は本人ではない」ってことで、
フリングポッセのペテン師・夢野幻太郎のついている最大の嘘は、彼の存在自体が嘘だってこと。じゃないかな。
夢野幻太郎と飴村乱数
これらのことを踏まえてコミカライズを読み直してみましょう。
乱数が初対面の幻太郎に声をかけるシーンに注目です。
「小説家の夢野幻太郎先生ですよね」
とたずねた乱数に対し、
「夢野幻太郎?余はそのようなけったいな名ではない 人違いじゃなかろうか」
「夢野先生は余の友人で(著者近影に)代わりに出てくれと頼まれた」
といったことを答える幻太郎。
冗談にしか聞こえない偏屈な受け答え。
でも、これ、幻太郎の言ってるのは本当のことだとしたら?
幻太郎は乱数に嘘なんかついてなくて
彼の本当の名前は夢野幻太郎ではなくて
夢野幻太郎は彼の友人。
ここに描かれていたのは、幻太郎が実は乱数には一番最初に誠実に本当の自分のことを話していたんだ、というとても美しい場面だったのかもしれないですね。