2022年9月2日でヒプノシスマイクは5周年。だからかどうか、オオサカディビジョンとナゴヤディビジョンの面々のソロ新曲が発売されました。
オオサカとナゴヤは追加戦士(追加ラッパーか)という都合によりソロ曲が1曲少なかったので、これで全員がソロを2曲手に入れたことになり、帳尻が合った計算になります。
CDを見た瞬間に悲鳴が出た。
この、背表紙?帯?に書いてあるチームの謎キャッチコピー的なやつ(「型破りな三英傑!」から始まる文章)がまだ生きていたのだ。これ、2017年の発売当初に各ディビジョンにつけられたものだから今と雰囲気が違って面白いんだわ。
せっかくなのでキャッチコピーまとめ
イケブクロ
前代未聞!新たなビジョン!歴史に刻む俺らのスタイル!
ヨコハマ
極道・警官・軍人!ハマの最凶最悪なヤロウドモ!
シブヤ
天然ジゴロ・ペテン師・ギャンブラーからなる奇人変人のネクストジェネレーション!
シンジュク
毒にも薬にも変幻自在に操る言葉の芸術が摩天楼シンジュクを支配する!
オオサカ
漫才師・教師・詐欺師!3師がお届けするコテコテパンチライン。まいどおおきに!
ナゴヤ
型破りな三英傑!日本の中心から大旋風を巻き起こす!
「ヤロウドモ」というセンス、ペテン師呼ばわりの幻太郎に笑ってしまう
No double dipping! 感想
どついたれ本舗のアルバムタイトルは和訳すると「二度漬け禁止」だから大阪の串カツの作法のことです。
コメディアン・ラプソディ
白膠木簓
てっきり『ボヘミアン・ラプソディ』のオマージュに違いないとウキウキワクワクしていたらそんなことはまったくなかった。ボヘミアン・ラプソディって「時々思う いっそ生まれてこなきゃよかったって」「僕はただの哀れな少年 誰も僕を愛してはくれない」「たいしたことじゃないんだ 僕には」
って孤独すぎる少年の物語だから簓にぴったりだと思ってたんだけどなー
Under Sail
躑躅森盧笙
これむちゃくちゃ好きな曲。ピコピコとした電子音の行き急ぐような連なりが印象的なんだけど歌詞は真摯に熱血な雰囲気で、この電波×真面目の組み合わせがまさに躑躅森盧笙のキャラクター性に合ってて最高!妙に切実なリリックと明るい楽曲の組み合わせって大好き。
「レツゴー」とか「フー」とかって相づちを盧笙直々に入れてるのが、たまらなくかわいい。それがまた固くてかわいい。
そしておそらく今、日本で
夢で帆を張るdaydream believer
という歌詞をこんなに説得力をもって堂々と歌えるのは躑躅森盧笙かルフィしかいないだろう
Count the money
天谷奴零
この天谷奴零の新曲の歌詞、数えたら「金」という語が10回、「money」と「マネー」は計10回登場したんだけど天谷奴ってなんでそんなにお金に執着してるんだろうか?奥さんのため???と謎が深まった曲だった。
戒定慧 感想
Young Gun of The Sun
波羅夷空却
この曲、正直試聴の時はあんまり引っかからなくて。なんか音が軽く聞こえたんだけど実物全くそんなことなかったごめんなさい。ギター?ベース?がゴリゴリ効いた、夏のフェスなんかにぴったりなアガる曲だった。そういう曲を19歳の空却が歌ってるのがもうたまらなくエモです。若いっていいなー、まさにYoung Gun of The Sun。それにこの曲はオフボーカル版もすごくよかった…!
Violet Masquarade
四十物十四
あああああこれもすごい曲。ゴージャスなサウンドに絢爛豪華な遊び心、最高です。簓に来るかと思われたボヘミアン・ラプソディはなんと十四くんに回ってきたのだ。個人的にV系とかよくわかってないんだけど、やっとVの良さみたいのが理解できた気がする。この曲もオフボーカルが面白くて、っていうか歌うのむちゃくちゃ難しくない!?十四の声優さんって歌うまいね!?
この曲、試聴のときに「一夜(ひとよ)」を「ひとや」ってって言ってるように聞こえて、手叩いて興奮して何十回もそこだけ繰り返して聞くもんだからyoutubeがビロンビロンになりましたが、「ひとや」
「十四」が歌詞にあるなら「空港」だとか「払い」みたいな単語も入ってるだろうに見つからなくて唸っている。
If I Follow My Heart
天国獄
試聴の時から名曲の気配がした天国獄の新曲。この曲聴いてたら涙が出そうになってやばいんだけどどうしてくれるんだ天国獄。めんどくさおもしろリーゼントおじさんってだけでもカードとして「強い」のに、こんないい曲歌われたら天国獄ガチ恋勢になってしまう。もうほんと…獄さぁ…
獄が東大に行っても、医者になっても、弁護士になっても獄の亡くなったお兄さんは絶対に帰ってこないんですよね。価値はないし意味はない。まさに
溶けた氷が元に戻らないのと同じ
という歌詞の通り。獄がどんなに頑張っても、祈っても、死者は戻ってこない。死者は死者として受け入れないといけない。そういう覚悟が描かれた詞でした。そんなリリックを、フルートから始めピアノに繋がりサックスとストリングスが盛り上げるエモエモのエモなトラックで包み込む。文句なしの優勝です。
そういえばこの曲が発表されたのはちょうどお盆の時期でした。お盆にお兄ちゃん宛の歌を発表してしまう天国獄は、キュウリの精霊馬よりバイクのほうが早く帰ってこれるだろ…ってキュウリでできた精霊バイクの超絶技巧設計図を一瞬考えるんだけど、そういやお前免許なかったなって軽く笑って、黙ってキュウリにつまようじを突き刺していくことでしょう。
以上、オオサカとナゴヤのソロ新曲の感想でした。実はナゴヤはこれまでにぎやかで極彩色な楽曲が多かった印象で、自分にあんまり楽曲が刺さらなかったんだけど、今回のアルバムでグッサグサ致命的なところを刺されてびっくりしました。こんなに繰り返して聞くのはヒプアニの名曲『Fallin'』以来かもしれない。
僧侶、祖母を亡くした少年、兄を亡くした中年、とナゴヤはそこはかとなく死の匂いがするのが悲しくて、でも泣いてるだけでは仕方ないから生きている限りはしっかり生きるんだよ…というのはまさに宗教的な問題で、だからこそ空却は精一杯『Young Gun of The Sun』みたいな曲を歌うんでしょうね。死に引きずられがちな獄、生死のはざまを仮面をかぶり行き来する十四、生を謳歌する空却、というキャラクター配分なのかもしれない。
そういえばタイトル『戒定慧』の意味ですが、
仏道修行に必要な三つの大切な事柄。悪を止める戒と、心の平静を得る定と、真実を悟る慧。三学。
だそうです。人はきっと戒と定と慧のバランスを探しながら生きているんだろう。だからナゴヤディビジョンは彼らでもあり、あなたでもあり、私でもあり、そのすべてにあるんだろう。