9/22、ヒプマイのコミカライズの1巻が発売されました。
イケブクロとヨコハマを描くside B.B&M.T.C+
シブヤとシンジュクを描くside F.P+M
ぽつぽつと雑誌掲載時に読んだり読まなかったりしていたんですが、単行本としてまとめて読むとむちゃくちゃ面白い。しかもそれぞれにデュエットCDと原案者書き下ろしドラマパートがついてくるという豪華さで、なんでこんな濃いものが同じ日に出るんだと嬉しい悲鳴が出ています。
本屋で買ったら2冊で4400円して、庶民労働者であるところの財布が一気に軽くなりました。給与が右から左です。ヒプマイって学生さんだったら追いかけるのキツいだろうな…
というわけで感想です。
side B.B&M.T.C+感想
蟹江鉄史さんから交代し、うまみザウルスさん(ふしぎな名前)が担当するイケブクロとヨコハマの話。あの、初アルバムについていた「グラスホッパー」にまつわるドラマをコミカライズしています。
ところで左馬刻様ってけっこう人によって解釈が違うキャラクターだと思っていて、楽曲や声優さんはダウナーなイメージ、ARBのイベントなんかはカラッとした暴力大王、ラジオだとぶっきらぼうな常識人、イラストだと線が細い美形…という印象ですがうまみザウルスさんの左馬刻様はおそらくボケキャラ&かわいいキャラ。ほんとにかわいい。確かにMTCでは銃兎29才、理鶯28才についで左馬刻リーダーは25才と一番若く、そんなMTCの末っ子左馬刻様を堪能できるのは最高ですよ。これまで、左馬刻のお茶目なかわいらしさをフィーチャーした公式よりの視点ってありそうでなかったので必見です。
山田兄弟もかわいくて、特に『転生したらチート魔術師じゃなくてチートラッパーだった件』で、なぜアニメのブルーレイを買うのかを一郎と二郎が三郎に説明するシーンは無茶苦茶楽しい。あのシーンはドラマとして聞くより漫画として視覚的に見たほうが、三郎の引き具合が伝わってきて笑える。
あと、うまみザウルスさんって飴村乱数を描くのうまいですね?飄々とした食えない感じがすごくいいなーと思いました。
Respect each Brother
ドラマ感想
楽曲『Respect each Brother』は躑躅森盧笙『own stage』と同じ方が作曲していて、すごくいい。ちょっとジャニーズみたいな溌剌とした雰囲気がたまらない。Spotifyで聴けないのがもったいないなー。
詞も熱くて、
“Respect each other”
俺は俺で お前はお前だから
という部分は良すぎ。つまり前回ドラマで山田二郎は兄・一郎を神だと思うのをやめ、二郎は二郎であり一郎はただの一郎であり、三郎は三郎でありみんな別の存在なんだ…さよなら兄ちゃん…こんにちは兄貴…という気づきを得た訳なんですが、それを踏襲した歌詞になっているのだと思われます。涙出るわ。
ドラマ、これもコミカライズで見たいなー!180cmの二郎が中学校に潜り込んで体育祭に出た!?二郎のやらかしが破天荒すぎてその絵を見たすぎる!
side F.P+M感想
シブヤとシンジュクのコミカライズは引き続き城キイコさん。城キイコさんほんとに大好きで信頼してるので末永くヒプマイを担当してほしいです。
こちらも「グラスホッパー」のストーリーをコミカライズ。グラスホッパーのお話ってこうなっていたのか!と目からウロコがボロボロと落ちる面白さ。聴覚で情報を仕入れるのが苦手なので助かるし、城キイコさんの漫画力で話自体もパワーアップしている気がする。
幻太郎がシュレシュレの猫をやる下り、よく見ると満月が描かれているのでcat'sのパロディなんだなーというのが分かりました。
乱数と下着姿のお姉さんが一緒にいたシーンはドラマ版ではエッチな匂わせだった気がしますが、コミカライズではモデルの採寸のためという方向になりつつあります。(ヤリチン乱数好きなのでちょっと残念)
ドラマではそんなにいい所のなかった翌檜が、巻末ではちょっと気づかいもできる子として補完されていたのもしんみり。
そしてライナーノートの幻太郎の項、「幻太郎のラップシーンは春と修羅を絵に散りばめているので探してみてください」という風な城キイコさんのコメント…
受けて立たせて下さい。
まず前提として、銃兎VS幻太郎戦のラップは幻太郎のリリックに
小生はもうひとりの修羅なのだ
とあり、宮沢賢治の『春と修羅』からサンプリングしてあることがわかります。城キイコ先生はこのシーンにさらに『春と修羅』の要素を絵で散りばめたのだということです。
まずは先生が言及しているとおり段組みですね。春と修羅はうねうねと波のような段組みになっていて、幻太郎のリリックもそれと同じようにうねうねとした見た目になっています。
次は一コマ目の灯籠のシーンかな。
灯籠の灯りが繋がって光るのは
わたくしといふ現象は
仮定された有機交流電燈の
ひとつの青い照明です
を絵で表したものじゃないかな。
タカッタ タカッタ タ
という擬音は
せはしくせはしく明滅しながら
いかにもたしかにともりつづける
因果交流電燈の
ひとつの青い照明です
かなぁ。灯籠がチカチカ明滅してるのを表現されているんだと思う。
もちろん背景に描かれている植物は
ZYPRESSEN 春のいちれつ
で、糸杉です。
上空には
雲はちぎれてそらをとぶ
のとおり雲が描かれていますね。
次のページの灯籠の周りにある丸い光は
日輪青くかげろへば
の日輪かと思いますがどうでしょうか。
最後、幻太郎の灯籠が二つの輪状攻撃を繰り出している場面は
すべて二重の風景を
だと思う。幻太郎といえば双子の兄がいることが明らかになっており、それも踏まえてのすべて二重の風景なんだとしたら、これはエモーショナル極まりないシーンとなっています。我ながらすごい早口になってしまった。
奇術館の殺人
ドラマ感想
『奇術館の殺人』はなんとトラックがDJ U-ICHIさん。ゆういちさんは6ディビジョンのバトル曲の脅威のリミックス『2nd D.R.B NON-STOP DIVISION MIX』をやっちゃった方で、これがほんとうに凄く良くて、
HUNTING CHARMはアジア色を強めても格好いいんじゃないか?
逆に笑オオサカは地域色を薄めても面白いかも?
開眼はミニマルなトラックもアリだしTOMOSHIBIは切迫感マシマシにしよ!Re:start!!!は叙情に全振りでBlack Journeyには走馬灯みたいな哀愁を…という、もうこれは「完全にヒプマイをわかってる人」の仕業だったんですよ。そんなゆういちさんが曲を手掛けられた奇術館の殺人、もちろん最高のトラックでした。曲の中にシナリオ部分が多く、もっと全編を楽曲にしてくれ~という思い。歌詞の縦読みが楽しかったです。
わかってんだ
誰なのか
いずれは
すべてを洗いざらい
という幻太郎のリリックはほんとにフィクションで片付けてしまっていいのかどうか。幻太郎もいつか本当のこと、おそらく双子の兄と入れ替わっているんじゃないかと思うんですが、そういうことを話してくれるのだろうか。
ドラマで気になる点は、探偵カガミキヨシは御手洗潔のオマージュなのかとか、(カガミ=鏡というのも双子のメタファーぽいですね)77万も借金があってニコニコしてる幻太郎凄いな、などなど。
最後にひとネタ。帝統が逆転無頼劇バクチの主人公バクチ役の声優に会うと大興奮し、「俺マジでギャンブラーとしてあんたのこと超リスペクトしてんだ」と言ったら“キャラと声優は別物だ”と幻太郎や声優に笑われるというやりとりがありました。
「キャラクターと声優を同一視しているちょっとアホな帝統」というギャグシーンなんですが、これ逆転無頼劇バクチの元ネタは『カイジ』シリーズのはず。カイジは以前に逆転無頼カイジというタイトルでアニメ化されましたが、その主人公カイジ役をされたのが俳優の萩原聖人さん。
で、実は萩原聖人さんはプロの雀士でもあるんですよ。つまり「カイジの声優さん」はガチのギャンブラーでもある。ということで帝統が言ってることは、次元を越えたメタい目で見るとぜんぜん間違ってないんでした…
というニヤリとするやりとりなのでした。