2025年6月11日は映画ヒプノシスマイクのアルバム『MIC AS ONE』の発売日でした。
全員集合絵柄の特典いいな〜と思って今回はじめてタワレコで注文したら、フラゲ日に届きませんでした。フラゲしたいなら安定の楽天かアマゾンだということがわかった。

今回も長々と感想を書いていきたいと思います。
というかですね、ヒプムビ、MIC AS ONE発売までに秘匿されていた内容が多すぎてやっと全てを語れるようになったか⋯!という感じです。2月の上映開始からいままで、わりと重要なことが隠されていた。
例えばオープニングに『ヒプノシスマイク -Division Battle Anthem- +』が 使用されていることや、エンディング曲『MIC AS ONE』 が存在し、なんとinvisible manners様が描き下ろしていること、同じくinvisible manners様が決戦曲『Claim Victory』を6パターン描き下ろしていることは少なくとも4月中旬になるまで公式アカウントで触れられていなかったし、『MIC AS ONE』『Claim Victory』に加えて『Last Man Standing』『Out of Harmony』『Stick To My Mic』のリリックが正式に公開されたのも6月11日。
映画を観て歌詞を知って、あっ!と思っても4ヶ月間それをクリアに呟けない状況にあったのです。王様の耳はロバの耳状態であった。
Last Man Standing
イケブクロvsナゴヤの曲。タイトルがLMSでLarge/Medium/Smallみたいでかわいい。山田三兄弟の年齢のようにも見えるし、ナゴヤ3人の身長の話のようにも見える。コーラのサイズの話みたいでもある。全然関係ないけれど、Last Man Standingという言葉を知ってから、職場って結局Last Man Standingだよなぁ、飛び抜けて優秀じゃなくても出世しなくても最後まで立ってたらそれだけで勝ちなんだろうなぁと思うようになったので個人的に汎用性の高い概念として思い入れが深い。(もちろんイケブクロとナゴヤはもっとソリッドかつ真面目な意味合いで使っています)
十四くんが
3,2,1 子ヤギの三兄弟
と言ったら二郎が
ヤギの兄弟だ?つまりは GOAT
てっぺんの Flowsに 着いてきな DAWGS
と返すのがクール。GOATは動物の「ヤギ」を指す名詞であり、スラングとして使われる「Greatest Of All Time(史上最高)」の略語でもある。ちなみにDAWGSは犬である。
Out of Harmony
ヨコハマvsオオサカ。地獄の花いちもんめみたいな曲調。Last Man Standingがスポーツ的な展開だったのに対し、こちらは特に左馬刻さまの湿度が非常に高い楽曲になっている。
特に左馬刻さまのリリック
お前が砕いたダイアローグ笑いごとじゃ済まないだろう?かつての相棒が踏みにじった信頼をハマの仲間がまたくれたんだ
に対する簓のリリック
進んどるようでムーンウォーク昔話うるさいっちゅうの!今が楽しないんかあほんだらほな あん時みたいに遊んだらぁ
ここが白眉です。なんという切迫した哀しいやりとりなんだ。このやり取りを聞き、ヨコハマ優勝ルートを見たら左馬刻さまに対する激重感情で激重怪ブログ記事を書いてしまったくらいの事件でした。
ヒプムビ 感想 - pyonkospicaの日記
うまく前に進めない左馬刻さまに対し、昔話うるさい!今が楽しないんか?と答える簓の気持ちもすごくわかる。簓はしんどい出来事をそれはそれとして処理し、楽しいことを探して日々の笑いに昇華して生きてきたんだろうな⋯と。
(MTC)地獄へ共にいける仲間と!
(どついたれ本舗)天下取りいける仲間と!
リリック的にもMTCが「地獄へ共にいける仲間」であり、どついたれ本舗が「天下取りいける仲間」で、一緒に底まで落ちて不幸になってもかまわないチームと、一緒に頂上を目指し幸せになりたいチームであるという全く正反対のベクトルをお互いが志向しているのも本当に良くてですね⋯
Stick To My Mic
来ましたシブヤvsシンジュクStick To My Mic。もう小ネタの宝庫すぎて拾い切れる気がしない⋯
まず前提としてヒプノシスマイクの主要キャラクター21人はそれぞれに歴史的人物の格言を背負っています。もしかすると映画から入ってこられた方はそれをご存じないかもしれない。ヒプノシスマイク公式サイトで簡単に見れるので調べてみてください。
そして、Stick To My Micには彼らシブヤ&シンジュクチームが背負う格言の人物からの引用/オマージュが含まれています。

幻太郎の灯すページは違うのかもしれない、幻太郎だけ2つ引用してあることになるから。でもあえて「灯」という言葉を使ったのは意味があるのかもしれないので上げています。そして、実は幻太郎のチャールズ・チャップリンは初期〜中期幻太郎の格言であり、今は
正直者であることは、沢山の友人を得ることはできないかもしれないが、常に正しい友人を得ることができる。
ジョン・レノンに変更されています。
だとしたら、作詞を担当した弥之助さんなら必ずジョン・レノン成分も入れるだろうと探したのですかジョン・レノン要素はわかりませんでした。ヒプムビ、制作が4年前からだという話なので、その頃は幻太郎がジョン・レノンになる話がまだ確定していなかったのかもしれません。
勝手に思ってるだけですが、乱数の「何もかもが違ったが間違えたとこだけは似てるな」は『アンナ・カレーニナ』の冒頭「幸福な家庭はすべて互いに似通ったものであり、不幸な家庭はどこもその不幸のおもむきが異なっているものである」に似た概念だなぁと。
つまり、最初にカレーニナの名詞を出してぐいぐい来た寂雷に対して、乱数は、“お前も俺も間違え方のおもむきは異なっているが間違った人だという属性は同じだな”とトルストイの小説『アンナ・カレーニナ』の冒頭を匂わせて返歌した、ということなんだと思っている。
Claim Victory
6パターンもあって嬉しいClaim Victory。
個人的に合歓さんの
頭冷やせと言っても聞かない キミは干からびたウーパールーパー
というリリックがめちゃくちゃ面白いなと思っていて、これに3番手の6人がどう返事したのか気になって集めてみた。

(毎度おなじみガビガビの表)
さらなる若さで科学的に対抗する三郎が最高だし、律儀にウーパールーパーと韻を踏んで2倍にして返す理鶯に大喜び。かと思ったら帝統もウーパールーパーで韻を踏んでいるのもラップ野郎って感じでアツいし、独歩が中央線と掛けて返してるのもサラリーマン独歩にしかできない技で上手い。天谷奴さんが昭和の語彙で煙に巻いてるのも、獄がものすごく正攻法で若者を諭してるのも大人のやり方って感じでたまらない。
ところで、Claim Victoryのクエスチョンマーク「?」の登場頻度も数えてみたらなかなかおもしろかった。
独歩 4回(最多)
俺タゲられ過ぎ?
意味不明どうよ?
ぴえん奨励?
弱いのが割り食う伝統芸?
十四 2回
誰がアダムで誰がイヴ?
甘い言葉を誰が聞く?
銃兎 1回
三権分立知らないのか?
理鶯 1回
覚悟は決めたつもりか?
0回
一郎・二郎・三郎
左馬刻
乱数・幻太郎・帝統
寂雷・一二三
簓・盧笙・零
空却・獄
乙統女・無花果・合歓
独歩は文末のクエスチョンマーク「?」の使用頻度がかなり高いことがわかった。自問自答的な性格もあるのかもしれないし、営業職という職業柄、ラップバトルでも対話形式のコミュニケーションを好むのかもしれない。
6パターン通してみると、リリックのこの部分は特にこのキャラクターがぴったり上手いことを言っていて、リリックのあの部分はあのキャラクターが最高かも、と思うことがあるので、6ディビジョン分をつぎはぎにコラージュして1曲にして「My Claim Victory」的な曲を作ってみたいような気がする。
MIC AS ONE
もしかしたらヒプノシスマイクディビジョンラップバトル編最後の楽曲なのかもしれないMIC AS ONE。私が最初に聞いたのは2月10日の試写会でした。その時からどうしても言いたかったのが山田一郎の歌詞。
少し不思議な Sci-Fi 風
なくても平気じゃね? 再配布
これ完全に藤子・F・不二雄〜!!!
まずSci-FiというのはSFのことで、すこし・ふしぎというのは藤子・F・不二雄大先生による有名なSF解釈。なので山田一郎パートは非常に藤子イズムにあふれたリリックなのである。では、なぜ山田一郎が藤子・F・不二雄をリスペクトした歌を歌っているのかというと、山田一郎の声優さんはジャイアンの声優さんと同一人物だから。
しかしヒプノシスマイク、これまでそんなにジャイアンと山田一郎を絡めることはなかった。山田一郎のファーストソロ曲「俺が一郎」が、ジャイアンの持ち歌「おれはジャイアンさまだ!」のタイトルオマージュかな?というくらい(あとARBというゲームで一度だけジャイアンを意識したイベントシナリオがあった。)
それで最後の最後、ここにきての直球の藤子・F・不二雄です。山田一郎と藤子・F・不二雄の物語が、ファーストソロ曲の「俺が一郎」で始まり、「すこしふしぎなSci-Fi風」で締めるの、本当に美しすぎんか!?!?
しかしヒプノシスマイク、過去にも似たようなケース、声優さんの他作品を匂わせたケースがひとつだけあったと記憶している。それはヒプノシスマイク -Division Rap Battle-+の天谷奴零パートで、
融和を説く
You はお得情報に
ゆうに慄く
と龍が如くで韻を踏んだのだ(天谷奴零の声優さんは龍が如くの桐生一馬役)。山田一郎と天谷奴零、この二人は因縁深い親子なわけで、こういう部分でも山田の業を感じざるを得ない。
あとは理鶯パートもじーんとした。理鶯ってこれまで全体曲ではわりと淡々としたパートを毎回担当していたので、今回メロディアスな部分を歌い上げていて本当にびっくりしている。
そして一二三。ものすごく辛い体験は、その体験ごと記憶をなくして忘れてしまうというのが一番幸せなことだと思うので、「何怖れたか忘れた!」とひふみが言えたのはひふみにとって最高のハッピーエンドなのだと思う。まさかわずか数行の言葉でこんなに優しい結末が描かれるなんて思わなかった。思えばシンジュク編の始まりは一二三の女性恐怖症を軸にした物語だったので、コンテンツ内でこんなに幸せな決着がついて本当に良かったね一二三⋯という気持ちでいっぱい。
そして独歩は、
そりゃでけえ戸建で
家族持ちはそりゃ偉え(エラい!)
でも人生それだけじゃねえ(じゃねえ!)
自己肯定感の育てゲー
でかい戸建てはともかく、家族をもつのもうっすら別の世界だと思ってる雰囲気があるのはなぜなんだろうか。まだ29歳/男性/有名ディビジョンラッパー/だからやろうと思えば簡単に結婚できそうな気がするんだけど。
中王パートも泣ける。
決して出来ない嘘くさい贖罪
いつか支払う独裁の負債
乙統女様のリリックから感じる確実な未来の不幸の匂い、
真実も嘘も愛し過ぎたか?
この性格変えないから
明日明後日もアイラインは鋭角
乙統女様の信者かと思いきや、清濁も酸いも甘いも自覚した覚悟の人になった無花果さん。invisible manners様はどこまで泣かせるんや
おまけ
MIC AS ONEで全員がマイクなしで歌っていたことに動揺した話
ヒプノシスマイク、それは、あの厄介で魅惑的なマイクについての物語。18人の男たちと3人の女たち、その外にいる何人何百人何万人以上の人々を興奮の渦に巻き込んだ、すべての中心にあるマイク。
しかし2022年の楽曲『CROSS A LINE』には
マイクを通せない いまだ不完全な理想
という歌詞があった。また同じく2022年には山田一郎が
「ヒプノシスマイクを使わないフリースタイルバトルをやってみたい」
と発言した。どうやらこの頃から物語内に“ヒプノシスマイクを使わない”というテーマが浮かび上がっている。ヒプノシスマイクの脱ヒプノシスマイク化である。
さらに2023年、天谷奴零が全ヒプノシスマイクを機能停止し、フェスが開かれる。フェス路線は一見急カーブに見えるけど、今思うと2022年から脱ヒプノシスマイク化への流れはあった。ヒプは意外にフェアに伏線を張るジャンルなのだ。
そして2024年にはイケブクロ編最新話で「ドラマ内でヒプノシスマイクが使用されずに話が解決する」という金字塔が建ってしまった。
じわじわと災害級のあのマイク、ヒプノシスマイクが物語から旅立とうとしている。
近年の脱ヒプノシスマイク化の流れ、これはたぶん自分の言葉はマイクを通さず伝える、言うならば「卒ヒプノシスマイクエンド」への予備動作なのだ。さて、卒ヒプノシスマイクエンドとは何ぞや?
おそらく「ヒプノシスマイク」が終わる時、それは、自分の声というのは最後にはヒプノシスのないただの肉声で伝えなければいけないんだ…ということに全員が気づくときである。結局、マイクのないそのままの声、そのままの言葉、そのままの自分で相手と、世界と対峙しないといけないのだ。
「ドラえもん」の最終回が「さようならドラえもん」であるように、幸せな子ども時代の最終回はサンタクロースの真実を知ることであるように、ヒプノシスマイクの最終回はヒプノシスマイクとの別れになるはずなのである。マジックアイテムありきで始まった物語というものは、最後にはマジックアイテム無しで世界と向き合わないといけない。卒ヒプノシスマイクである。「ヒプノシスマイク」とはヒプノシスマイクとの別れをもって完結する、少しほろ苦い成長物語なのである。
⋯と、いうようことをずっと考えていたし、ずっと信じていた。ブログにも度々書いた。もちろんオタクの戯言である。
だからヒプムビのED『MIC AS ONE』で、本当に全員がマイクを持たずに歌っていた時には頭がくらくらした。全員手ぶら。盧笙は元から手ぶら。「ヒプノシスマイク」という名を冠した物語で、マイクすら使わない歌唱が本当に成立してしまった。21人の卒ヒプノシスマイク化が果たされてしまったのだ。スクリーンを眺めながら、もうこれで本当にヒプノシスマイクという物語は終わるのだと思った。
でもですね、最後の最後に山田一郎はあのマイクを取り出してくれました。良かった、本当に良かった。山田一郎があのマイクを握るかぎりヒプノシスマイクは終わらない、と信じて。それでは皆さんご一緒に
世話になるぜヒプノシスマイク!