漫才コンビ「どついたれ本舗」の悲劇(ヒプマイ マガポケコミカライズ感想)

 

 

むかしむかしあるところにどついたれ本舗という漫才コンビがありました

 

メンバーは白膠木簓と躑躅森盧笙。

漫才界の頂点の景色を目指したふたりは、しかし志半ばにコンビを解散してしまいました。ふたりに何があったのでしょうか?

 

 

 

ボケとツッコミ

 

どついたれ本舗が解散した、その伏線はヒプラジ躑躅森盧笙回から始まります。

 

盧笙は「笑うと肩が揺れる」というリスナーからの相談に

「その振動を電気エネルギーに変換できたら無駄がないのにな」

と答えました。



すごく個性的なユニークな視点で、盧笙はおもしろいなぁ、と感じたのですが、

また別の質問には
「みんなが夢を叶えてたら男の子の半分は電車の運転士で残りの半分はヒーローになってるわ」

と答えました。


これは不思議な話です。

「その振動を電気エネルギーに変換できたら無駄がないのにな」

は漫才で言うボケの資質を感じさせるのに


「みんなが夢を叶えてたら男の子の半分は電車の運転士で残りの半分はヒーローになってるわ」

ツッコミなんです。
しかもけっこうテクニカルなプロの職業的ツッコミ。

 

盧笙、性質的にはどう見てもボケなのにツッコミも出来るのか・・・?

と、いうのがヒプラジオオサカ回の今年2月。
そして4月になってコミカライズにてその解が発表されました


盧笙はボケからツッコミに転向していたのです。
だからボケなのにツッコミもできるのです。

 


簓もボケのタイプなので、どうやら簓と盧笙はダブルボケが揃ってしまったコンビだったみたいです。(簓が本当にボケをやりたいかは不明で、簓がボケをやったほうがネタがウケるという戦略的な都合もあると思う。事実、簓がボケ盧笙がツッコミとなり役割が交代した途端にどついたれ本舗の快進撃は始まりました)

 

簓はおそらくネタ重視、頭脳派の計算されたボケ、
盧笙は天性のボケ。


ベクトルの違うボケが揃ってしまったのが漫才コンビ「どついたれ本舗」の不幸だったのかもしれません。

 

案の定、解散直前の大舞台で盧笙はパニックを起こします。

何を・・・何をいうんやったっけ?

挨拶?

ボケる?

ツッコむ?

 

生来のボケ気質を置いて簓にツッコミ続けた盧笙は、自分がボケなのかツッコミなのかよくわからなくなってしまいました。

自分を見失い、言葉がでてこない「あがり症」を発症した盧笙はコンビの解散を求めることとなったのです。

 

 

 

白膠木簓と躑躅森盧笙

 

白膠木簓は緊張した少年時代を過ごしました。不仲な両親のもとでいつも不安な気持ちだったと回想しています。

(余談ですが白膠木簓は、大半が不幸な子ども時代を過ごしたであろうヒプノシスマイクの18人の中で「子ども時代自分は不安だった」と認めたはじめてのキャラクターです。自分の気持ちを言語化するのに長けているのは、さすが言葉で勝負する漫才師と言える)

 

そんな簓少年は不仲な両親に仲良くしてほしくて「作った笑顔」でお笑い芸人の真似をしていたのです。

 

しかし、ある日テレビで漫才を観て、「自然とこみあげる笑い」を知りました。

そこから狂ったようにお笑いを観て、漫才師は彼のヒーローとなりました。

 

一方、躑躅森盧笙。

彼の母は教師で、子どものころから塾やお稽古の生活でした。盧笙は厳しい親に反抗し、

「おもろい奴がどこにもおらんかったから俺が芸人になって笑っかしたろ思って」芸人を志すのです。

 

漫才を観て「自然にこみあげる笑い」を知った、という観客としての原体験からすべてが始まった白膠木簓と

 

「おもろい奴がおらんから俺が芸人になって笑かしたろ」と、あくまで自分が主役躑躅森盧笙では笑い(と世界)の解釈がすこしちがいます。そして少し謙虚で客観性に富むぶん、簓のほうが笑いの神に愛されるだろうことは想像に難くありません。

 

 

もちろん躑躅森盧笙が傲慢だ、などと言う話ではまったくありません。

「おもろい奴がおらんから俺が芸人になって笑かしたろ」というのは

「世界はもっと面白いはずじゃない?」という願いと根底でつながっているのです。

 

そう、飴村乱数のように。

 

つまり、歯を食いしばり飴を噛み砕きながらひとりぼっちで孤独な戦いをしていた飴村乱数と同じく、躑躅森盧笙も世界を相手に自分ひとりで立ち向かっており、それはとても気高い精神の持ち主でないと出来ないことなのです。

 

 

 

そもそもロショー・ツツジモリはピン芸人体質。彼の昔のシュールなネタや、「俺は簓がおらんと笑いがとれん」と漫才のコンビ性をネガティブにとらえる思考回路にそれが表れています。(だからひとりでステージに立てる教師は実は盧笙に適した職業だと言える)

 

 

 

簓にも盧笙にも非があったわけではなく、ふたりは方向性が違った、という話なのです。

ただただ、それだけ。

 

 

 

 

 

 

むかしむかしあるところにどついたれ本舗という漫才コンビがありました

 

 

メンバーは白膠木簓と躑躅森盧笙。

漫才界の頂点の景色を目指したふたりは、しかし志半ばにコンビを解散してしまいました。

 

 

 

 

そしてH歴。

オオサカディビジョンにどついたれ本舗というチームがありました。

メンバーは白膠木簓と躑躅森盧笙、そして天谷奴零。

 

彼らは頂点の景色を見ることができるのでしょうか?

 

 

けれどもそれは、別の物語。

 

 

 

 

 

こちらもコミカライズの感想


ヒプノシスマイクと家族についての一考察(オオサカ・ナゴヤコミカライズ感想) - pyonkospicaの日記