『The Champion』はすごいという話 ヒプノシスマイク8thライブシンジュク感想

 

唐突ですが、みなさんが好きなシンジュクディビジョンの楽曲は何ですか?

 

私は

・The champion

・Fallin’

が一二を争っていて、さらに

・君あり故に我あり

が続くかなという感じです。

そんなわけでシンジュクのライブを見たんだけれど、とにかく思ったのは『The Champion』はやっぱりすごい曲だし画期的な曲だったということ。

じゃあ『The Champion』は何がそんなにすごいのか。それはたぶん、「キャラの治安が悪くなくてもカッコいいヒップホップは成立する」ということの証明をしたからすごいのだ。

おそらく、日本のヒップホップ界で一番有名なリリックは『Greatfull Days』の

俺は東京生まれHIPHOP育ち 悪そうなヤツはだいたい友達

だと思うんだけど、麻天狼の3人はまったくHIPHOP育ちではない。悪そうなヤツと友達でもない。

彼らは穏やかな医師で、女性恐怖症のホストで、社畜のサラリーマンである。毎日真面目に働いているただの社会人であり、あなたやわたしと似た普通の人々である。年齢だって35・29・29なのでヒプマイでも平均年齢の高い、落ち着いたチームである。

なのに『The Champion』、むちゃくちゃかっこいい。ダークなイントロ、退廃的なオケ、それにやっぱりリリックがすごい。

一二三の

祝杯 さあ全部飲み尽くせ 店の酒飲み尽くせ 

独歩の

俺らがナンバーワンって事は

誰に狙われるか分からない

必要以上素性明かさない

とでも言いたいが 職場は変わらない

寂雷の

革命へのメスなら手の中に

真っ暗闇 抜けたら薄明かり

このオペ いや この奇の物語ならば

たった今 音を立てて始まったばかり

という歌詞、すべて「自分が優勝したら職業人として実際にどんな変化が起こるのか?」ということを描いた地に足がついたリリックなんだけど、喜びを素直に出している(ように見える)一二三、妙に具体的な心配をする独歩、一周回ってファンタジックな言い回しになっている寂雷、三者三様のキャラクターがあらわれていて解釈もうますぎる。

別に東京生まれでなくても(もしかしたら麻天狼は東京生まれなのかもしれないけれど…)、HIPHOP育ちじゃなくても、悪そうなヤツはだいたい友達じゃなくても素晴らしいヒップホップは成立するし、ナンバーワンラッパーになれることを証明した。だから『The Champion』はヒプマイの数多い楽曲の中でも多くの人の胸を打つ、特別なナンバーなんだろう。

 

ところでヒップホップとは何なのだろうか。きっといろんな流派や主義があるんだろうけれど、私が個人的に信じているのは以前ヒプラジでCreepy Nutsが語った、「ヒップホップとは嫌だったことをそのまま歌えばアートになるというシステム」だという考え方です。おそらく麻天狼の魅力、『The Champion』のカッコよさの秘密はここらへんの考え方と根っこは同じなような気がする。

そして一番すごいのは、「俺は東京生まれHIPHOP育ち 悪そうなヤツはだいたい友達」という治安わるわるリリックの作詞者も、ダーティなんだけどクリーンな『The Champion』の作詞者もともにZeebraさんであるということだろう。つまりZeebraさんはすごいという話なのである。